あとちょっとで上場できたのにできなくなった場合の顛末 | Investment Nuggets

あとちょっとで上場できたのにできなくなった場合の顛末

 最近の新興市場というかIPO銘柄は、上場直後に問題が発覚したり、下方修正したりで批判の的となりやすい。ということは、ギリギリで上場できるよりは、ギリギリで上場できない方が、いろんな意味でいいということになるのだろうか?結論的にはわからないが、今回はギリギリ上場できない銘柄を検証してみる。


 上場承認までされておきながら、ギリギリ上場できなかった会社を見ると、その答えが若干見えてくるかもしれない。以前に取り上げたリビングコーポレーションのように、一旦上場承認されて、問題が起きてもしつこく食らい付いていって、結果オーライの会社もあるわけだ。しかしながら、通常はギリギリで上場できなくなってしまった場合、なんとも前途多難になってしまうようだ。


 日本ビルドもそんな会社の例のようだ。日本ビルドは、昨年、ジャスダックで上場承認されたにもかかわらず、上場承認後に顧客から訴訟の提起があったために、上場が中止となった会社である 。そもそも、同社は売上高が30億しかないにもかかわらず(予想値はすごい)5件もの訴訟案件を抱えている会社 であったのが気になるが、とにかく上場承認された。上場承認されたことから考えると、すべての案件でイチャモン的な不運なものと理解されたのだろう。ところが、さらなる訴訟ということで中止になった・・・というところか。

 とはいえ、こういう場合もなんとか善後策さえ打てば、リビングコーポ(8998) のように、すぐに上場もできたりもする。要するに、日本ビルドはそれができなかったのだろう。「できなかった」という過去形で語るのには理由がある。諦めてしまったと思わざるを得ない開示を発見したからだ。それが、「株式譲渡制限設定につき株券提出公告 」である。

 通常、上場前には会社法上の非公開会社から公開会社になり、公告方法を官報から電子公告なんかにしてしまう。日本ビルドもそうだった。日本ビルドは、その電子公告で今まさに公開会社から非公開会社になろうとしているわけだ。すなわち、当面上場はないわけだ。また、会社法上の非公開会社になるのだから。


 新たな1件の訴訟で諦める上場。これまで上場準備にかかった費用を考えても、すぐには諦められないはずなのに諦めたのである。これを逆説的に考えると、仮に上場していれば致命的なことになっていたのであろう。株価で言えば、一度くらいのS安は必至だったのだろうか。


 こんな考え方が本当に正しいかどうかはわからないが、「ギリギリ上場できなかった銘柄」を検証すると、なんとも上場できる、できないの境界線の恐ろしさを感じるものである。投資家もこんなことを考えながら、目論見書の【事業等のリスク】を読むべきだ。